全てフィクションです。

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先進国の人口減は「養育コストの上昇」というマルサスの罠2.0なのではないか

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はじめに

 先進国はどこも少子高齢化に悩まされています。日本も例外にもれず、少子高齢化による社会保障費の増大&現役世代の手取り額低下のダブルパンチにあえいでいます。現役世代が減って苦しいのに、現役世代への締め付けを強くして余計に子供が生まれなくなるという悪循環の少子高齢化ですが、解決策はないのでしょうか。

 ある論者は、「男女平等を社会進出を増やせば少子高齢化は改善する」といいます。一方で過激なツイッター論客などは、「むしろ男女平等が少子高齢化を推し進めた」という凄まじい意見も提出しています。インターネットの戯言で「老人だけが〇ぬ病気でも流行ればいいんだけどなあ」という人がいましたが、実際に流行ってしまうと「老人を活かすために若者の生活を削る」という政策が実施されてしまいました。2020年から現在(2022年)までの2年間に青春を制限された若者が、将来恋愛や結婚をマトモにできるのかというのは頭が痛い問題ではありますが、ここでは本題ではないので敢えて触れません。

 

 むしろ、私が考えている少子高齢化の原因は「マルサスの罠2.0」(マルクスではありません)とでもいえるような、社会の発展に伴う養育コストの増大が原因ではないかというものです。マルサスの罠とは、「人口が倍々ゲームで増える→しかし食糧生産は足し算でしか増えない→結果的に増えた人口の食料需要が満たせない→結果的に多くの人が飢えて人口が減る→再度人口が増える」というものです。要は、「人口が増えても、食糧生産は増えないから、たくさんの人が飢えてしまうよね」という理論です。

 マルサスの罠は結果的に化学肥料導入などによる農業生産力の大幅な向上によって解消されました。しかし、そのはずの先進諸国では人口減が発生しています。これは「マルサスの罠2.0」とでも言える現象が先進諸国で発生しているのではないでしょうか。今回の記事は、これについて書いていきます。

 

(注:私はマルサスの原書を読んだわけではなく、あくまでマルサスの罠に関する一般的な説明を読んだだけです。そのため、マルサスについて本格的に研究したことがある人にとっては奇妙に感じられる箇所もあるかもしれません)

 

「食える仕事」の争奪戦が教育コストの増大をもたらし、人口が減る

 教育コストの増大は人口減少をもたらします。これは言うまでのことではありません。子供を高校や大学まで行かせなければならない社会環境であれば、子供一人当たりの教育コストは増大します。そうなると親は有限の財産の中から子供一人当たりに対してより多くの教育コストをかける必要があり、結果的に養える子供の数は減ってしまいます。

 では何故、現代の先進国では教育コストが増大しているのでしょうか。それは「食える仕事」を得るためには、一般的に大卒や高卒である必要があるからです。昔は中卒でも現場仕事なり工場労働なりをしていれば家族を養える給料が得られていたそうです。しかし、現在では中卒に高給を払ってくれる会社はなかなか存在しません。

 社会の高学歴化・機械化が進めば進むほど、「中卒でもできる仕事」の値段は買いたたかれていきます。そして、知識や機械を操作できる専門職の価値はうなぎ登りになり、稼げる仕事は「高学歴」でないと着けない仕事に限定されていきます。

 そうなると、親として「子供を将来、人並みに稼げる人材に育てなければならない」と考えた際に、高校や大学まで進学させる必要が出てきます。つまり、子供により多くの教育コストをかけなければならないのです。

 

 そうなると当然、人口の減少が発生します。限られた財産から子供を教育しなければならないのに、子供一人当たりの教育コストは増大しているのですから、より少数の子供しか育てられないということになります。ツイッターで話題になるような「小学校から中学受験塾で勉強漬け、中高一貫の私立高でバチバチに勉強、大学も四年間しっかりと通い、理系の場合は大学院も当然進学する。」というような状態では、3人も4人も子供を作るわけにはいきません。家庭によっては1人を育て上げるのが精一杯でしょう。

 このような状態では人口が増えるわけがありません。中学校受験をするような層は一部かもしれませんが、世帯年収が300万円のような家庭であっても「子供を高校に活かせなければならない」という圧力があることには変わりありません。その様な家庭にとって、子供が18歳になるまでの養育費や学費は決して安い出費とは言えず、3人も4人も子供を育てるわけには行かなくなります。

 世帯年収が1000万を超えるような上層中流階級は中学受験に教育コストを吸われ、世帯年収が400万を切るような上層とは言えない中流階級は「子供を高校まで養わないといけない」という教育コストを吸われてしまいます。

 ツイッターやインターネットの住人は大学での「高学歴」が普通なので意外かもしれませんが、現在の日本の大学進学率は50%ほどで、残りは専門学校卒や高卒で社会に出ていきます。しかし、高卒のような「ネット民から見れば低学歴」の世界でも、「流石に中卒はキツイから、せめて高校は出ておけ」ということが言われています。

 社会の上層も下層も(何をもって上か下か言うのは分かりませんが)、とにかく「限られた所得から、精一杯の教育投資をしている」のが現在の子育てなわけです。親の「階級」を子供に引き継がせるためのコストが増大していると言っていいでしょう。その様な状況では、「義務教育プラスアルファ」が求められます。この「義務教育プラスアルファ」の出費が、おそらく人口減少に拍車をかけているのでしょう。

 

 これはマルサスの罠と相似形をなしていると私には感じられます。マルサスの罠では「人口が増える→人口を支えるだけの食料を社会が供給できない→結果的に人口が減る」という論理が成り立っています。

 一方で今の社会では、

「人口が増える→社会が発展する→発展に見合うだけの教育コストが求められる→しかし社会(政治)はその教育コストを全面的には供給できない(大学の学費が上昇しているのがいい例でしょう)→結果的に教育コストの不足から人口が減少する」

という論理が成り立ってしまっています。これはまさにマルサスの罠2.0とでも言えるのでないでしょうか。

 

人口減少は教育コストの低下を(おそらく)もたらす・人手が足りなくなれば低学歴でも「食える」

 ということで、「教育コストの増大が人口減少をもたらす」という論理を追ってきましたが、逆に「人口減少が教育コストの低下をもたらす」という論理も存在するのではないかと思います。今度はそれについて考えていきたいと思います。

 人口減少はとにかく「人手不足」をもたらします。そうなると、「誰でもいいから、カネはとにかく払うから、仕事をしてくれ」という事になります。こうなると、大卒だろうが高卒だろうが中卒だろうが、誰でも仕事につけることになります。レジ打ち、運送、飲食店、水商売など、「単純労働」とされる仕事であっても、人手不足であれば需要と供給の法則から給料が上がるでしょう。そうであれば「低学歴でも仕事がある」状態になり、教育コストは低下します。

 マルサスの罠の後半部分では「人口が減った結果、食料に余剰ができ、再度人口が増える」という論理が成り立ちます。まさに現代社会でも同様に、今後「人口が減った結果、仕事に余剰(人手不足)ができ、再度人口が増える」ということが発生するのではないでしょうか。移民を入れずとも、数十年もたてば「人手不足による賃金上昇と教育コストの低下」が、勝手に人口を増加させてくれるのかもしれません。

 人手不足により「肉体労働でも家族を養える社会」が到来すれば、わざわざ子供を大学なり高校なりに進学させる必要はありません。中卒で社会に放り出しても、それなりに食っていくことができるのですから。

 しかし、このシナリオは決して楽観的なものではありません。「人手不足」が「人口の増加」によって解消された場合、再度「高学歴を求めるチキンレース」が発生してしまうからです。人口の増加によって人手不足が解消されると、一部の「稼げる仕事」に人気が集中します。そのような仕事はおそらく大卒などの高度な技能・知識を要求するでしょう。そうなれば元の木阿弥で、再度の教育コストの増加が人口減少を引き起こしてしまいます。

 

 以上の私の「僕が考えた最強の理論」に従うと、「人口増→教育コストの増大→人口減→教育コストの低下→人口増」のサイクルを先進諸国は延々と繰り返すことになります。これはまさに罠といって差し支えない状況でしょう。では、どうすれば私たちはこの罠から逃れることができるのでしょうか。

 

マルサスの罠2.0を乗り越えるにはベーシックインカムの導入?

 マルサスの罠2.0を乗り越えるために参考にすべきなのは、本来のマルサスの罠との比較においてでしょう。本来のマルサスの罠では「食料の供給が増えない」ことが原因でした。一方でマルサスの罠2.0では「『食える仕事』が限られているための、教育コストの上昇」が人口が増えない原因になります。結局問題は「人間がどうやって食うか」というところに帰着するわけです。

 本来のマルサスの罠は「食料供給の増大」で解決しました。しかし、マルサスの罠2.0はそれだけでは解消できそうにありません。「子供の将来を思う」という親の切実な願いが教育コストを押し上げ、人口減少をもたらしているのですから、単純に食料供給を増やすだけでは意味がなさそうです。

 

 解決策になるのは「子供の将来を心配する親心」への緩和策でしょう。親としては「子供が将来きちんとした立派な人間になってほしい」という思いから教育コストを増大させ、それが結果的に人口減少に繋がっているのではないか、というのがマルサスの罠2.0です。そうであれば、ベーシックインカムの導入や、大学の無償化などの施策が有効だと思われます。

 ベーシックインカムも大学無償化も、現在の経済水準・技術水準では難しいものがあります。しかし、AIや各種技術の発展により、いつしかそれが可能になる日が来るのかもしれません。マルサスの時代にはなかった化学肥料がマルサスの罠を解決したように、マルサスの罠2.0にあえいでいる時代にはない新たな技術が、マルサスの罠2.0を解消してくれるのかもしれません。

 

 今回はこんなところでおしまいにしたいと思います。ツイッターもやっているので、是非フォローをお願いします。

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